写真:アスベスト

外壁塗装やリフォームをする際に、自宅の建材にアスベストが使われているのを知って、対応に困っている人もおられるのではないでしょうか。
アスベストは健康に害があるため現在では使用が禁止されていますが、今でも使用されている建物や住宅が多く残っています。

外壁の表面塗装が劣化すると、アスベストが飛散して健康被害を引き起こすおそれがあります。
また、大規模災害が起きる可能性もあり、家屋の倒壊や損壊で、住んでいる人がアスベスト飛散の被害にあうことも考えられます。
少しでも被害を防ぐには、外壁の定期的な塗装が必要です。

アスベストが住宅のどの部分に使われ、いつ頃から使用禁止になったのか、築何年の住宅なら安全と言えるのか気になるところでしょう。
そこで今回は、アスベストが住宅に使われている場合、塗装やメンテナンスでどのような点に気をつければ良いのか、リフォームや除去の方法についても説明します。

目次

アスベストが含まれる住宅の外壁塗装とメンテナンス

住宅の屋根や外壁の塗装は、直射日光や風雨に常にさらされて劣化します。
アスベスト含有の建材に対しては、特に定期的な塗装が重要といえるでしょう。
ご自宅の建物にアスベストが含まれている場合は、信頼できる業者にしっかりと外壁塗装をしてもらい、慎重にメンテナンスをする必要があります。

アスベストと塗装

建材にアスベストが含まれている場合でも、塗装がしっかりと機能していればアスベストが飛散しません
アスベストに囲まれて生活していることは不安かもしれませんが、外壁材を切断したり穴をあけたりしなければほとんど問題ないのです。

しかし、表面の塗装膜が劣化して建材が傷んでしまえば、アスベストが飛散する危険があります。
アスベストの使用が禁止となった、2006年以前の住宅では注意が必要です。

耐用年数の長い優れた外壁塗装の塗料

アスベスト含有の壁をしっかりと保護するためには、汚れに強い耐久性のある塗料で塗装するのをオススメします。
外壁塗装業者に現状を確認してもらい、外壁の劣化の度合いもみてもらいながら、適切な塗料を選ぶようにしましょう。

おすすめの塗料は下記が挙げられます。

・日本ペイントの水性有機無機複合2液型塗料のアプラウドシェラスター
・関西ペイントの水性1液型無機系塗料のアレスシルクウォール
・アステックペイントの弱溶剤形2液型の無機ハイブリッドコートJY
・アステックペイントの汚れが付着しにくい超低汚染リファイン
・エスケー化研の汚れにくい親水性のクリーンマイルドSTシリーズ

住宅の箇所や建材の種類によっても適切な塗料が異なってくるため、塗装業者と相談して決めましょう。

塗料の種類と耐用年数

一般に塗料には、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素、セラミックがあり、耐用年数の長い高品質な塗料も多く出てきています。
また、同じシリコン樹脂の塗料でも、法律で厳密な成分含有量の割合が定められていないため、実際の耐用年数にばらつきがあります。

塗料のタイプに関しても、耐用年数が長い2液式やフッ素塗料などでは塗装技術が必要で、必ずしも表示耐用年数もつとは限りません。
塗装がどれくらい持つかは、表示の耐用年数よりも、塗装業者の技術にかかっているところが大きいと言えます。
耐用年数前であっても、塗装表面が劣化している症状が見られたら、早めに外壁塗装をする必要があります。

外壁塗装の塗膜の傷と劣化症状の確認

近年特に気になるのは、強風による飛来物の衝突です。
飛来物の衝突で塗装表面の塗膜に傷がつくと、そこから雨水が侵入して建材が劣化してしまいます。

また、大気汚染で酸性雨の被害にあいやすい地域や季節には、外壁塗装の劣化症状をこまめに確認しましょう。
塗膜が劣化して塗料が紫外線にさらされると、顔料が表面に浮き出し、手で触るとチョークのような粉が手につく、チョーキング現象がおきます。

住宅にアスベストを含有した建材が使われている場合は、台風や大雨の後には、塗膜の損傷や劣化がないか確認する必要があります。
外壁に傷やヒビ割れが見つかったならば、隙間を埋めるコーキング剤や防水テープで応急処置をし、信頼できる塗装業者に相談しましょう。

外壁塗装以外のアスベスト含有建材の対処法

アスベストを含有した建材への対処方法には、外壁塗装の他に、アスベスト建材を撤去して張り替える方法とカバーする方法があります。
アスベストの工事や廃棄に費用と手間がかかるため、近年は重ね張りの「カバー工法」も注目されています。

アスベスト含有建材の撤去と貼り直し

問題を完全に解決するには、アスベストを含む建材を撤去して新しい建材に張り替える、外壁材の張替えや屋根の葺き替え工事が考えられます。

アスベストは2006年頃まで実に様々な用途に使われてきたため、建材の種類が多く、種類によって除去の仕方が異なるほか細かな規定があります。
そのため、除去するには専門業者に依頼する必要があります。
また、廃材の廃棄につても厳重に定められていて、産業廃棄物処理に高額な費用が発生します。

撤去作業中にアスベストが飛散することも考えられ、家族はもちろん近隣住民や作業員の安全も確保しなければなりません。
アスベスト建材を完全に入れ替えるのが最も安心できる方法ですが、工事の手間と費用でなかなか張り替えに踏み切れない人も多いようです。

屋根・外壁を新しい建材で覆う「カバー工法」

外壁塗装では塗装前に高圧洗浄が行われますが、劣化が激しいと水圧でアスベストが飛散する恐れがあります。
そのため、外壁の状態によってはカバー工法を勧められることがあります。

カバー工法とは、金属系のサイディングなどでアスベストの壁を覆ってしっかりと保護する方法です。
撤去費用をかけずに、アスベストの飛散を防ぐことができます。

しかし、地震などで建物が損壊した場合、アスベストが飛散することも考えられ、問題の根本的な解決にはならないと言えます。
アスベスト建材への対処法を決めるのは非常に難しく、最終的にはその家に住む人の判断によるところが多いです。
そこで、判断の基準となるよう、「アスベストとは何か」「住宅のどこに使われているか」「どんな対応策があるのか」について解説します。

アスベストの使用と規制の歴史

アスベストが健康に悪いというニュースは、誰でも一度は耳にしたことがあると思います。
しかし、住宅のアスベストの使用箇所や、アスベストによる健康被害、廃棄処理についての情報は、一般にはなかなか知られていません。

アスベストを使用した外壁や屋根にどう対処するかを決めるには、アスベストがどのような建材なのかをまず理解する必要があります。

アスベストの素材と特性

アスベストは、蛇紋石(じゃもんせき)や角閃石(かくせんせき)など天然の鉱物繊維からできていて、石綿(せきめん・いしわた)とも呼ばれます。
熱に強く、断熱性・耐火性に優れており、酸やアルカリにも強い性質を持っています。
さらに、摩擦にも強く、電気を通さないため、ビルや工場の建材などに広く使われてきました。

価格も安く加工が簡単なため、1950年代から学校の体育館を始め、鉄筋コンクリートのビルや大型設備、住宅の屋根や外壁に多用されていました。

アスベスト規制の歴史

1970年代からアスベストの健康被害が指摘され、1975年にアスベスト含有率5%以上の吹付け作業が禁止されました。
しかし、優れた建築資材としてあまりに多くの場所で使われていたため規制が遅れ、20年の月日をかけてようやく1995年に使用禁止となります。

特に毒性の高い青色の「クロシドライト(青石綿)」と茶色の「アモサイト(茶石綿)」は、輸入・製造・使用が全面禁止になりました。
その後、2006年にアスベスト含有率1%を超える製品の輸入禁止、2012年には全てのアスベストの輸入・製造・使用が禁止されています。

そのため2006年以前の建物には、アスベストが使用されている危険性があります。
木造住宅においても、外壁塗装や増改築・建て替えを検討している人は、工事を行う前に自宅の建物にアスベストが使用されていないか確認が必要です。

アスベストの健康被害と誘発する病気

写真:病院

このように完全に輸入・製造・使用禁止に至ったアスベストは、どのような健康被害を引き起こすのでしょうか。

アスベストの飛散による健康被害

アスベストとはギリシャ語で「消化できない」という意味を持ち、人体に取り込まれると体内に残り続け健康被害を引き起こします。

アスベストは繊維状の鉱物からなり、繊維の細さは髪の毛の5000分の1で、空中に浮遊するため呼吸によって人体に入り肺に蓄積します。
アスベストの施工・解体工事に携わるだけでなく、震災後の瓦礫の中を歩くだけでも、吸引して健康被害をもたらす可能性があります。

2012年にアスベストの使用が全面禁止されるまでに、約1千万トンも輸入されてきたため、現在も多くの住宅の中に潜んでいると考えられます。

アスベストによる呼吸器系の病気と肺がんのリスク

アスベストの飛散度と危険性は、アスベストの吹き付け建材、断熱・耐火シート素材、工場生産のアスベスト建材などで異なってきます。

長い間アスベストを吸い込みつづけると、アスベストの繊維が肺にまん延し、肺組織が機能できなくなり呼吸困難に陥ります。
肺組織が硬化する「石綿肺」の症状が起こり、肺を覆う胸膜に悪性腫瘍(中皮腫)ができ、肺がんを引き起こすリスクが高くなります。

アスベストが世に出回って20年ほどで、工場や建設現場で作業していた人にこれらの症状が現れ、1970年ごろから国際的にも問題となっていました。
アスベストは飛散しなければ吸引されないので安心ですが、建材自体の劣化や震災時の家屋の倒壊が発生すれば、甚大な被害につながる危険性があります。

アスベストが使用されている建物の箇所

住宅のどの部分に、どのようなアスベストが使用されているのでしょうか。
まず、アスベストはどのような建材に使われていて、いつ頃まで製造・使用されていたのか見てみましょう。

アスベストを使用した建材の禁止

1986年には、「アスベスト含有石膏ボード」の製造が禁止され販売が終了します。
1987年に、屋根の防水シート(ルーフィング)への使用が禁止、また、アスベスト含有の「ロックウール吸音天井板」の製造が終了。
1990年には、「窯業系サイディング」などの外壁ボードのアスベストの使用が禁止されています。

2002年には、天井や間仕切り壁に、アスベスト含有の「ケイカル板」の使用が禁止。
2004年には、アスベストを使用した、軒天・外装・内装に使われる「スラグせっこう板(別名:フレキシブル板)」「パーライト板」の製造が終了します。

ご自宅が、上記の規制前に建てられている場合は、軒天を含む屋根や外壁・内壁・内装にアスベストの使用がないかを確認する必要があります。
軒天とは、屋根の軒下になった裏側の部分で、軒裏、上げ裏、軒裏天井とも呼ばれる部分です。
設計図や建築資料などが残っていれば、使用した建材の商品名などを調べるのも良いですし、地元の工務店にみてもらうのも良いかもしれません。

危険度の高いアスベスト吹付けの「ロックウール」断熱材は、エレベーターシャフトの内壁や、倉庫・駐車場・工場・体育館の屋根に使われていました。
吹付け材は戸建住宅にはあまり使われていませんが、2006年の法規制前の店舗兼住宅のビルの屋根裏や柱に施されている可能性があります。

アスベスト使用の建物のリフォーム工事

アスベストの飛散が心配なのは、建物の増改築や一部解体などの工事です
塗装では修復しきれないほど外壁や屋根が劣化している場合は、外壁材の張替えや屋根の葺き替え工事が必要となり解体工事が発生します。

では、実際にリフォームしなければならなくなった場合には、どのようなことに気をつけなければならないのでしょうか。

アスベスト建材の解体・撤去作業

アスベストが使用されている建物を解体・撤去する際には、「石綿作業主任者」という国家資格を持つ監督者をおくことが法律で定められています。
石綿作業主任者は、事前調査・作業計画書・作業現場の換気・作業員の保護具の監視を行い、人体に被害の出ないよう安全な工事を監督します。

アスベストを含む建材は、再生可能な部分と廃棄する部分に分けて、産業廃棄物として費用を払って処分しなければなりません。
法令に厳密に従って作業するため、通常のリフォームよりも手数と費用と時間がかかります。

アスベストに詳しいリフォーム会社に工事依頼

アスベストを含んだ建材の大規模な修繕工事をする場合は、発注者は「大気汚染防止法」に従った届け出をしなければなりません。
監督者は「石綿障害予防規則(省令)」に従って、作業環境の安全を確保し、「廃棄物処理法」に従った適切なリサイクル処置をします。

工事にあたっては、作業の発注者の氏名・作業の実施期間・作業方法の届け出、現場責任者の氏名及び連絡先を掲示板に明記する義務があります。
工事に専門的な知識が必要なため、アスベストの工事の経験のあるリフォーム会社を探すことが重要です。

アスベストの除去に使える補助金

多くの地方自治体では、アスベストの使用に関する調査やアスベスト撤去工事を、補助金を設けることで支援しています。

補助金制度は自治体によって異なります。
前述のアスベストの規制の年代から、建材にアスベストが使用されている可能性のある場合は、地方自治体の環境課や建築課に相談するのがおすすめです。

アスベストが飛散する前にニシムラ塗装にご相談ください

アスベストが飛散して吸引してしまうと、呼吸器系に重大な被害を引き起こし、肺がんを誘発するおそれがあります。
そのため、まずは飛散を防ぐために、日頃からのメンテナンスが重要です。
外壁が劣化して崩れたり割れたりしなければ、飛散する危険はほとんどありません。

外壁材自体を劣化させないためには、適切な外壁塗装の実施が不可欠です。
外壁塗装は建材を保護するために施しているので、塗膜が劣化するとアスベストが飛散するリスクを高めてしまいます。

もし、外壁塗装の劣化が心配なら、私たちニシムラ塗装にご相談ください。
私たちは、塗装後も1年、3年、5年、7年・10年の間隔で無償点検を実施していますので、塗膜の劣化にいち早く対応できるでしょう。
お客様が安心して暮らすことのできる住宅作りのお手伝いをさせていただきますので、お気軽に何でもお問い合わせください。