写真:瓦屋根

多くの住宅の屋根には、傾斜が設けられています。
屋根に傾斜がある一つの大きな理由は、雨水を建物に浸入させないように効率よく流すためです。

屋根の傾斜には、なだらかなものから急なものまでいろいろあります。
個性的な急斜面の屋根も、陸屋根の屋上バルコニーも素敵ですが、雨漏りという視点から考えると気を付けなくてはなりません。

屋根からの雨漏りの原因として、実はこの傾きが関係することも多くあるのです。
屋根材にとって必要な傾斜が足りない場合や、急斜面の屋根で雨樋への負担が大きくなりすぎてしまう場合は、雨漏りのリスクが大きくなります。
屋根の特徴をふまえて、どのような雨漏り対策や修理が必要か、知っておきましょう。

外壁塗装は、それなりに費用のかかる工事です。
クリア塗装の基礎知識やメリットデメリットを知っておき、失敗のない塗装工事ができるように備えてください。

目次

屋根勾配とは

屋根勾配とは、屋根の傾き加減を表す言葉です。
屋根は家の外観を作る大切な要素でもありますが、傾きはデザイン面だけでなく機能面でも大切な役割を果たしています。

屋根の勾配には、水の排出を促す役割があります。
当然、急な傾斜の屋根の方が排水しやすく、陸屋根と呼ばれる傾斜のまったくない屋根では水が溜まってしまうため、防水処理や排水処理の対策が必要です。

また、傾斜が少ない方が屋根面積は少なくなり、屋根材が少なくて済みます。
一方で傾きが急だと屋根工事がしづらくなるなど、傾斜によって修理のポイントが違います。
さらに、瓦、金属、スレートと素材によっても施工方法が異なり、傾きを利用して排水が入り込まないようにする場合には、正しい傾斜をつけないと雨漏りの原因になってしまいます。

勾配の表し方

勾配の表し方として、3通りの単位が主に使われています。

寸法勾配(尺貫法勾配)

一尺(303mm=10寸)の水平な線を引き、その片端から垂直に伸ばした線の高さによって、どのくらいの傾斜かを表します。
尺貫法で表した高さがそのまま勾配になります。

たとえば、一尺の線に対して5寸の高さがある場合、寸法勾配で表すと「5寸勾配」となります。
最近では、寸法表記が「m」表記になっていたり、分数勾配で表記されたりすることも多くなってきています。

分数勾配

寸法勾配と同様に一尺の水平な線を引き、その片端から垂直に伸ばした線の高さとの比率をもって、どのくらいの傾斜かを表します。
「垂直線の長さ/水平線の長さ」の分数で表します。

例えば、一尺(10寸)の線に対して5寸の高さがある場合、分数勾配で表すと5/10、あるいは1/2となります。

角度勾配

一般的に学校で習う角度で「45°」のように表すものです。
建築業界ではあまり使われません。

屋根材に必要な勾配

屋根に使われる屋根材には、瓦、金属、スレートなど素材が何種類かあります。
素材によって施工方法が違うため、水はけのしやすさも異なります。

「この屋根材の場合にはこのくらいの傾斜がないと水はけがうまくいかない」というように、屋根材ごとに必要な勾配が決まっています。
具体的に、屋根材ごとに必要な勾配をみていきましょう。

瓦屋根

最低勾配4寸勾配(約21.8°)

波型の瓦を少しずつ重ねて葺いていくため、瓦と瓦の間には隙間があります。
瓦の下には防水シートなど浸水を防ぐ下地がありますが、傾斜が緩いと瓦の隙間から下地へ伝わる浸水量が多すぎてしまい、下地では防ぎきれず雨漏りの原因となってしまいます。

また「戻り勾配」といって、下地の状態での勾配よりも瓦をのせた状態の方が勾配は緩やかになるため、その分を見込んで4寸とされています。

金属屋根

最低勾配1寸勾配(約5.57°)
横葺きの場合は3寸勾配

金属屋根はひとつひとつのパーツが大きく継ぎ目が少ないため、水が入り込みにくい屋根材です。
そのため、緩やかな勾配にも対応できます。
しかし、横葺きの金属屋根では、屋根材が重なる部分に段差ができるため、傾斜が緩いと排水が逆流してしまい、雨漏りの原因となってしまいます。

また、金属屋根の中でも瓦のような形状をしたものの場合は、瓦屋根と同様に隙間ができてしまうため、4寸勾配以上が必要になります。

スレート屋根

最低勾配3寸勾配(約16.7°)

スレート屋根では水返しという機能がなく、傾斜が緩いと雨水が屋根材に留まる時間が長くなります。
雨水が流れにくいと、屋根材を覆っている塗膜が剥がれやすくなったり、コケが生えやすくなったり、劣化が進み雨漏りへとつながっていきます。

施工の際には、屋根材ごとの必要勾配を守らないと雨漏りの原因となってしまいます。
また、勾配が合っていないと、雨漏りの補修をしても再び雨漏りが起きてしまいます。
雨漏りの修理の際には、屋根材にとって適切な勾配がとられているか確認しましょう。

屋根勾配の違いによる雨漏りの特徴

6寸勾配以上の急な傾斜を急勾配、3寸勾配以下の緩い傾斜を緩勾配と呼びます。
また、その中間の一般的な勾配を並勾配と呼びます。

急勾配屋根

急勾配の屋根は風を受けやすい形状のため、暴風による屋根材のはがれや、クギのゆるみなどが発生しやすくなります。
雨水の排出は良いですが、別の原因の雨漏りに注意が必要といえるでしょう。

また、急勾配の場合には、雨漏り修理の際に直接上って作業することができないため、通常の足場に加えて屋根足場を設置する必要があります。
足場設置の費用がかかる上に、屋根足場を使っての作業は効率が悪く、修理にコストがかかります。
屋根の上まで部品を運ぶのが難しい場合には、クレーン車を使うこともあります。

並勾配屋根

並勾配は一般的に普及しているため、雨漏りの修理の際に比較的スムーズに作業ができます。
葺き替えが必要になった場合にも、対応できる屋根材が豊富なため選択肢が多いです。

緩勾配屋根

緩勾配の屋根では雨水の滞留する時間が長くなるため、傾きの急な屋根と比較すると雨漏りのリスクが高くなります。
また、ホコリやゴミが屋根にたまりやすく、屋根材の劣化が早くなることにも注意が必要です。
屋根材が劣化すると防水性が失われていくため、浸水しやすくなります。
緩勾配の屋根は表面が下から見づらいため、異変があった場合に気づきにくいこともデメリットと言えます。

また、雨漏り修理で葺き替えを行う際には、緩勾配に合う条件の屋根材は少ないため選択肢が限られます。
一方で、緩勾配の屋根は屋根面積が少なく、足場も必須ではないため、工事費用は安くなる傾向があります。

屋根に雨水が残っているほど、下地へ浸水する割合が増えてしまいます。
下地の防水シートは浸水を防ぐためのものですが、限界があります。
長時間の浸水や度重なる水の刺激で、防水シートは劣化したり穴が開いたりし、建物の内部へと水が浸入していきます。

雨漏りという視点で考えると、傾きの緩い屋根はリスクが高いことを知っておき、適切な屋根材や修理方法の選択を心がけるとよいでしょう。

雨漏りの具体的なパターン

写真:雨漏りした天井

屋根の勾配が原因で雨漏りを引き起こす場合は、具体的にどのような事例があるかみていきましょう。

施工会社の知識不足

たとえば、リフォームの際に金属屋根はすべて緩勾配にも対応できると考え、施工が容易な横葺き金属屋根で施工することが考えられます。
しかし、横葺き金属屋根は緩勾配には対応しておらず、防水シートに大量の雨水が流れ込み、漏水してしまうのです。

屋根の選択はプロにお任せしておけば安心と考えがちですが、屋根工事に必要な知識は幅広く、正確な必要勾配を知らずに施工してしまう業者も中にはあります。
金属屋根の中でも縦葺きであれば、緩勾配に対応できるため、縦葺き金属屋根に葺き替えることで雨漏りを解消できます。

設計ミス

たとえば、初めからスレート屋根に必要な勾配が足りていなかったという事例が考えられます。

一見して勾配が十分であるように見えても、一部分のみ傾斜が異なり勾配が足りない場合もあるので注意が必要です。
スレート屋根は構造上、降雨時に風が強く吹くと、雨水が逆流して内部に入り込みやすいです。
傾きが緩い場合には、逆流して雨漏りが発生するかもしれません。

下地が傷んでいない場合は、スレート屋根の上から緩勾配に対応できる金属屋根を重ね葺きすることができます。
下地が傷んでしまっている場合は、葺き替えが必要となるでしょう。

経年劣化

長年住んでいる家屋の場合、建物自体に傾きが発生していつの間にか勾配が変わることもあります。
どちらかの面で必要な勾配が足りず、雨漏りを引き起こしてしまうかもしれません。

特に緩勾配の場合には、少しの傾きで必要勾配を下回ってしまうこともあります。
根本の傾きを解消できればそれに越したことはありませんが、雨漏りを防ぐことを優先するには緩勾配に対応できる屋根に葺き替えるという方法もあります。

風圧によるめくれ

強風が吹いた際に、屋根の一部がめくれてしまう可能性があります。
雨漏りに至る前に気づかなければ、大雨で急に症状が出るおそれがあります。

特に急勾配の屋根は、風の影響を強く受けるため、風圧による屋根材のめくれが発生しやすいです。
ただ、急勾配の屋根は外から確認しやすく、不具合にいち早く気が付くことができるかもしれません。
特に台風など強風が後は、屋根を目視でチェックしてください。

もし急勾配屋根で下からは見えない箇所があると、簡単に上って確認することができないため、不具合をチェックするためだけに足場を組む必要が出てくる場合もあります。
急な傾きの屋根は修理に手がかかるため、強風にも耐えられるよう、より一層きちんとした施工をしておく必要があります。

雨樋の不具合

大雨の際に雨樋から排水があふれてしまい、軒裏を伝い雨漏りすることがあります。

大雨や大雪の場合には一度に大量の雨雪が屋根から流れ落ちるため、雨樋には負担がかかりやすくなります。
勾配ごとに適した雨樋の形状に変更する、雪止め金具を設置するなどの対策をすれば、雨漏りを未然に防ぐことができるでしょう。

いろいろな事例がありますが、中でも勾配が不足する場合は特に雨漏りにつながりやすいです。
勾配不足の対処方法として、勾配を変えることは可能なのでしょうか?

カバー工法(屋根の重ね葺き)を行う際には、勾配の微調整が可能な場合があります。
あくまでも微調整なので、大きく変える場合には、屋根をすべて撤去し屋根の基礎からやり直すしかありません。

しかし、基礎からのやり直しは葺き替え以上に高額な工事となります。
また、住宅全体の設計にも関わるため、構造計算のやり直しや自治体への確認申請が発生することもあり、大がかりな作業となります。
今の勾配を変えずに、雨漏り補修方法を検討する方が現実的といえるでしょう。

屋根勾配とメンテナンス

屋根の形状によってメリットデメリットがあることを知っておき、早めの修理がけることで、雨漏りを予防できます。
特に、緩勾配では雨漏りに細心の注意を払う必要があります。
最近では緩勾配に特化した雨漏りを引き起こしにくい屋根材も開発されていますので、葺き替えの際には検討してみるとよいでしょう。

勾配によって、補修の際の工事費用も異なります。
屋根の面積も影響しますが、屋根足場の有無で大きく違ってきます。
多くの業者では5寸勾配程度までは屋根足場無しでの作業が可能です。
補修の見積もりをとる場合には、勾配を考慮した適切な見積もりがされているかを確認しましょう。

屋根のメンテナンスもニシムラ塗装にお任せください

屋根の勾配は、屋根の寿命を左右する重要な要素の一つです。
急な勾配、緩い勾配、それぞれに特徴があり、特徴を理解してメンテナンスをしていかなくてはなりません。
特に緩い勾配では、水がたまりやすく雨漏りに注意が必要です。

屋根材にも、紫外線からのダメージを防ぐために塗装が施されています。
適切なタイミングで屋根塗装を実施することも、雨漏りを防ぐ一つの手段といえるでしょう。

もし、屋根の劣化が気になるようでしたら、私たちニシムラ塗装にご相談ください。
苫小牧市で一番の実績を持つ私達なら、住宅を長持ちさせるためのメンテナンスをご提案できます。
もちろん、ご相談やお見積もりは無料で承りますので、お気軽にお問い合わせください。