
板金屋根とは、金属の板を加工して葺いた屋根の総称を指します。瓦やスレートに比べて非常に軽く建物への負担が少ないこと、雨水を流す性能が高く緩やかな勾配の屋根にも使える特性があり、古くはトタン屋根、最近だとガルバリウム鋼板の金属屋根など日本の住宅でも長く使われています。
また、屋根全体が金属でなくても部分的に板金は使われています。屋根の頂上を覆う棟板金や、屋根と屋根が谷状に交わる部分に設置される谷板金、屋根の端のケラバや水切りといった箇所がそれにあたります。
屋根は雨や風などから住宅を守ってくれる要となっている場所なので、錆などの劣化については多くの人が気にするところです。特に最近の主流となってきた金属屋根は「錆びにくい」とはされていますが、それでも金属である以上無視はできない問題です。また、瓦屋根やスレート屋根の住宅でも板金部分だけが錆びるというケースは非常に多く見られます。
本記事では、板金屋根が錆びる仕組みから錆の種類、放置した場合に起こること、そして錆の進行度に応じた補修方法まで解説します。
ガルバリウム鋼板も錆びる?板金屋根の種類と錆びやすさ
金属の屋根でまずイメージしやすいのが「トタン屋根」です。トタンは鉄板に亜鉛をメッキしたもので、昭和から平成初期にかけて使用されてきました。戦後の日本の住宅を支えてくれた素材ですが、トタンには「錆びやすい」という弱点があります。比較的短期間で錆びてしまうため、ペンキ塗りなど定期的なメンテナンスが必要でした。
錆びやすいという最大の弱点を克服したのが「ガルバリウム鋼板」です。ガルバリウム鋼板はアルミニウムと亜鉛の合金をメッキしたもので、これにより錆びに非常に強くなり長持ちするようになりました。

画像引用:外壁塗装・屋根葺き替え工事 苫小牧市美原町O様邸|施工事例
このガルバリウム鋼板を使用した屋根は現在の日本の主流の屋根のひとつになっています。北海道でもほとんどの住宅がガルバリウム鋼板を用いた屋根を採用しています。さらに、ガルバリウムの合金メッキにマグネシウムを加えて耐食性をさらに改良した次世代の金属屋根材「SGL鋼板」も登場しています。
このように聞くと「ガルバリウム鋼板以降は錆びない」と思いがちです。実際、業者の中にはメンテナンスフリーであると説明する方もいますが、それは正しくありません。
塗装やメッキ層によって非常に錆びに強くなっているものの、素材そのものは鋼板(鉄)です。なので、なんらかの要因で表面に傷がついたり、錆を呼び込む条件が揃ってしまえば錆びます。耐用年数通り、もしくはそれ以上に屋根を長持ちさせるには、どのような素材であろうと定期的にメンテナンスを行う必要があるのです。
板金屋根が錆びる原因
錆び=酸化なので、板金屋根が錆びるには鋼板に水と酸素が触れることが条件となります。屋根は空気にも雨にも触れる場所なので条件は常に満たしているのですが、メッキ層、そしてその上にある塗装が水と酸素を鉄からガードしてくれているため、しばらくは錆びることはありません。
裏を返せば、錆が浮いてきた要因はメッキ層と塗装によるガードが崩れているということです。第一要因としては最も外側に施している塗装の寿命や剥げと考えられるでしょう。
錆は塗装が弱い箇所から出る
錆が出てくる場所はある程度決まっていて、基本的に塗装が弱い箇所から出てきます。
例えば、軒先やケラバの立ち上がりといった板を折り曲げている箇所は、曲げた時に塗装も引き延ばされているため塗膜が他より薄くなっています。よって、同じダメージが入っても先に音を上げてしまいます。釘やビスの周辺も同様です。釘・ビスを打ち込む衝撃で塗装に細かな割れが入り、その割れ目が水の通り道になり錆びる要因を作ってしまいます。その他、谷板金のように水が集まって流れる部分や屋根の北面や日当たりの悪い面などは雨水と触れている時間が他より長くなる分痛みが早くなります。
また、環境によって錆びる速さは大きく変わるため、自分たちの住宅がどのような環境にあるかを把握しておくことも重要です。
海沿いの地域では、潮風に含まれる塩分が金属の腐食を強く促進するため、通常より短い周期でのメンテナンスが必要になります。線路沿いや交通量の多い道路沿い、工場などの近くだと鉄粉や排気ガス、酸性の物質が多くなりやすく、これらが付着することで劣化が早まりやすいです。
北海道の住宅においては、雪国特有の「すが漏れ」という問題があります。すが漏れは、屋根に積もった雪が室内の熱で溶け、軒先で凍って氷のダムを作ることで行き場を失った水が屋根の継ぎ目から逆流してくる現象です。これによりじわじわと侵入してきた水が金属を錆びさせたり、腐食を進行させてしまうのです。
このような「凍害」については以下のコラムもぜひ参考にしてください。
凍害とは|ニシムラ塗装
他にも、落雪時の摩擦で塗装が少しずつ削られ錆びやすくなったり、道路に撒かれる融雪剤を車が跳ね上げることで中に含まれる塩分が屋根に付着して腐食が進行するなど雪は様々な問題を引き起こすため、注意が必要です。
板金屋根に出る錆の種類と緊急度
板金屋根に出る錆の種類は「赤錆」「白錆」「もらい錆」の3種類です。それぞれに色や発生の仕組みが異なり、対応の緊急度も変わります。

赤錆
私たちが「錆」と聞いてイメージする赤茶色っぽくザラついた錆が「赤錆」です。これは塗膜が剥がれたり傷がついたりして、内部の鉄が直接空気と水分に触れることで発生する錆で、すでに塗装もメッキ層も突破しているため、緊急度は最も高いです。
赤錆は発生した場所から周囲に広がっていきます。錆びた鉄が膨張して塗膜を内側から押し上げることで周辺の塗膜がさらに剥がれ、そこから新たな錆が生まれます。見つけたら早めに業者への相談が必要な状態と考えてください。
白錆
白い粉や斑点状の付着物が見えたら、それは「白錆」です。白錆はガルバリウム鋼板などの表面にある亜鉛やアルミのメッキ層が酸化してできます。これは、内部の鉄の代わりにメッキ層が身代わりになった結果ともいえます。
そのため、赤錆ほど緊急度が高い錆ではありませんが、当然メッキ層のガードが突破されてしまえば次に酸化するのは中の鋼板になってしまうので白錆のうちに対応しておくという選択肢も十分考えられるでしょう。
もらい錆
自分の屋根が原因ではない錆もあり、そのようにできた錆を「もらい錆」といいます。もらい錆は、他の金属から発生した錆や鉄粉が付着し、そこを起点にして錆びてしまう現象です。
たとえば、屋根に使われている釘やビスが先に錆び、その錆汁が流れて板金を錆びさせたる、線路の近くの建物で電車の走行によって削れた鉄粉が飛んでくる、近くに工場があって金属粉を含んだ空気にさらされる、といったケースなどが考えられます。
これは屋根材そのものが原因となっているわけではないため、既に発生した錆を落とすだけでなく、発生源を絶って再発を防ぐ必要があります。
錆は拡大するので放置厳禁!
錆が少しだけだった場合に「まだ大丈夫だろう」と判断しがちですが、この判断が後に大きな出費を招く可能性もあります。錆を放置することで屋根がどうなっていくか、以下のような段階に分けることができます。
- 第1段階:小さな点の錆が出現する
- 第2段階:錆が点から面へ拡大する
- 第3段階:金属が薄くなり、穴が開く
- 第4段階:雨漏りの発生
- 第5段階:下地材の腐食
第3段階まで到達してしまうと塗装だけでは対応できず、屋根材の交換などが必要になってくるため、費用がぐんと上がります。なので、遅くとも第2段階までには対策したいところです。錆を放置した期間の長さがそのまま最終的な工事費用に跳ね返ってくるので、決して放置せず早めに業者に相談しましょう。
棟板金の錆は飛散リスクも

錆びているのが屋根の頂上を覆う棟板金の場合、雨漏りと別に強風による「飛散リスク」が発生します。
棟板金は、内部にある貫板(ぬきいた)と呼ばれる下地材に釘で留められています。なので、錆によって鋼板が浮き上がったり釘穴が広がったりしてしまうと、そこから雨水が内部へ回ります。水を吸った貫板は徐々に朽ちていき、やがて釘を掴んでおけなくなります。この状態で台風などの強風を受けたとき、棟板金は大きな金属板のまま飛んでいきます。
飛散した板金が近隣の建物や車、通行人に当たれば、損害賠償問題に発展しかねません。棟板金は築7〜10年頃から釘の緩みが目立ち始めるといわれています。屋根なので目視で確認できず、かといって自分で屋根に登って確認するのは危険なので、10年ほどを目処に一度点検を受けておくことが自分の家だけでなく周囲の安全を確保するために重要です。
自分でできる錆のセルフチェック方法
屋根に錆ができているか確認する方法について、まず大前提として屋根に登ることは絶対に避けてください。特に板金屋根は濡れていると極めて滑りやすいため事故につながります。また、薄い金属であるため踏み方を誤ると凹ませたり踏み抜いたりして新たな傷の原因を作ってしまいます。基本的には地上や2階の窓、ベランダなどから確認しましょう。
安全にできるセルフチェックポイントを公式サイトでも公開しています。これらのうち一つでも当てはまるものがあれば、点検を検討するタイミングです。

画像引用:外壁塗装・屋根塗装|ニシムラ塗装
塗装で直せるケースは想像より多い
屋根の錆が大きく広がっているのを見ると「もう屋根リフォームしかないのか…」と不安になってしまいますが、専門業者が実際に調査してみると塗装で十分に復活させられる状態であることが少なくありません。
赤錆が広がっていて一見手遅れに見えても、金属が痩せておらず穴が開いていなければ、丁寧なケレン(錆を落とし塗料が食いつくように表面を整える工程)と屋根塗装で適切なメンテナンスを行うことで寿命を大きく延ばせます。

要は、判断の分かれ目は錆が広がっているかどうかではなく、鋼板の厚みが残っているか、下地が健全かどうかです。だからこそ、専門業者が屋根に実際に上がって触れて確かめる現地調査が重要なのです。
屋根の錆びが気になったら早めに業者に相談しよう
これまでの内容でわかるように、板金屋根の錆びはそれ自体が住宅のダメージというわけでは決してなく、屋根材のメンテナンスが必要であるサインと捉えることができます。
重要なのはそのサインを見逃さないように定期的にセルフチェックすることと、サインを見つけた際に放置せず早めに相談することです。塗装で済む場合と屋根の葺き替えが必要となる場合では工事費用が数十万円変わってくることもあるため、後になって「あの時相談しておけば…」と後悔しないように早めに相談しましょう。
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