写真:外壁

近年、一戸建ての住宅では、モルタルを塗る外壁の他にサイディングボードで造る家が増えてきました。
工場であらかじめ生産されたサイディングボードの外壁は、施工日程が短く単価も安いため、住宅を安く建てることができます。
また、簡単に施工できるため、職人の技術による仕上がりのばらつきがありません。

現在、戸建て住宅の外壁材のシェアは、約8〜9割がサイディングとモルタル塗りの壁で占められています
その中で、最近よく耳にするようになってきたのが、「ALCパネル」と呼ばれる高級感のあるおしゃれな外壁建材です。

ALCパネルは、見た目に重厚感があり、耐火性にも優れていて丈夫ということで、戸建て住宅の外壁に使用する人が増えてきています。
しかし、ALCでできた外壁材の実情や性質については、意外と人々に知られていまないのが現実です。

今回は、ALCパネルとはどのような特徴を持った建材なのか、また、その弱点やメンテナンスのコツについて説明していきましょう。

目次

ALCの特徴

住宅の壁がALCでできている場合は、モルタル塗りやサイディングの外壁と異なった特徴があります。
そのため、十分な配慮を持ってメンテナンスを実施することが必要です。

まず、ALCとはどのような建材なのか、その製造方法やサイディングとの違いについて理解しておきましょう。

ALCとは

ALCは、Autoclaved Light weight Concreteの略語で、ドイツやスウェーデンで100年以上も昔から作られているコンクリート系の外壁建材です。
工場で、ケイ石・生石灰・セメントを混ぜ合わせ、そこに発泡剤を加えて気泡を作り、板状に形成します。
その後、10気圧の高圧蒸気釜で約180度の高温で10時間ほどかけて焼き、軽量で強度の高いコンクリートパネルに仕上げられます。

見た目にはコンクリートとは思えない、軽石のように軽量な多孔質の外壁材で、日本語では「軽量気泡コンクリート」と呼ばれています。
コンクリート壁は通常、現場で型に流して固めるため、作業によっては不良が発生しがちです。
しかし、ALCは工場生産であるため、品質が均一で保証されています

ALCの主な特徴

ALCは断熱性や遮音性、耐火性に優れ、高層ビルや倉庫、駅のホームやショッピングセンターなどの多くの公共設備に使われています。
コンクリート板を組み立てるため、モルタルのような曲線ラインの壁に仕上げることはできませんが、中に鉄筋マットの入った軽くて丈夫な壁を実現できるのです。

住宅の床や屋根、間仕切りとしても広く使われます。
日本のALCパネルの住宅としては、旭化成のヘーベルハウスが有名です。

ALCは、熱による膨張や乾燥による収縮率が小さく、夏の猛暑や冬の乾燥でも反りやたわみの変形、ひび割れといった経年劣化の少ない建材です。
ALCパネルの廃材を細かく砕いて再利用するなど、リサイクルの取り組みも行われており、環境に優しい素材としても注目されます。

ALCとサイディングの違い

ALCは、気泡の入った軽くて分厚いコンクリートの板で、厚みの規格は「35mm以上75mm未満」です。
工場で規格に基づいて生産され、主に、35mm・37mmの薄型は木造住宅に、50mmの厚型は重量鉄骨造りの建物に使われています。

一方サイディングは、薄くて硬いセメント系コンクリート板で、厚みは12~24mmです。
こちらは、軽量鉄骨や木造家屋に使用されています。

ALCもサイディングも工場で生産され、現場では組み立て作業のみで済みます。
パネルとのつなぎ目は隙間ができるため、ジョイント部分をシーリング剤で防水処理します。

外観の面では、ALC建材はサイディングよりも高級感があり、石造りのような厚みのある重厚感が特徴です。
タイルの柄の凹凸を加えた意匠パネルもあり、デザイン性の高い豊富な種類から選べます。

一般にALCのほうが値段は高いですが、耐火性・保温性・断熱性・遮音性に優れていると言われています
しかし、ALCでできた壁は気泡に水が入りやすく、水分を含むとサイディングよりも劣化しやすい点には注意が必要です。

外壁にALCを採用するメリット

ALCは、広く普及しつつある外壁材です。
住宅の外壁にALCパネルを使用することで、具体的にどのようなメリットがあるのかみてみましょう。

軽量なのに丈夫

ALCパネルの最大の魅力は、丈夫なコンクリート材でありながら、水に浮くほど軽量な素材という点です。

耐震性を考えると、外壁が重いほど振動の負荷が大きくなり、建物の倒壊などのリスクが高まります。
外壁が軽いということは、それだけ地震の揺れに強い建物になり、近年起こるであろうと危惧されている、大規模な震災に備えることができます。

また、外壁材が軽いことで現地での施工作業がやりやすくもなります。
作業員の数も少なく、工期も短くなるため、それだけ建築費用も安くなります。

耐火性・防音性・遮音性の効果

ALCパネルはコンクリートが主原料なので、耐火性が高いです。
火災が起きても煙や有毒物質を出さず、周辺住宅の火事でも延焼の被害にあいにくいといえます。
ALCパネルの細かい気泡が空気層となり、熱の伝わりを抑えて防火壁となってくれるのです。
阪神淡路大震災の時にも、ALC建材の住宅が地震後の火災の延焼をくい止めた事例が見られています。

また、ALCは一般の建材に比べて遮音性・防音性が高い性質があります
外壁材の内部にある無数の気泡が音を吸収するため、道路の騒音などが室内に届くのを低減してくれるでしょう。
断熱材のグラスウールや石膏ボードなどを併用することで、さらに防音効果を高めることができます。

建物全体の遮音・防音構造と合わせて、ALCパネルの外壁を適切に取り入れることで、安全で過ごしやすい静かな住居環境が確保できます。

断熱効果と湿度調整機能

ALCパネルは、コンクリートの中に作られた気泡が空気の層を作るため、夏場は外部の熱が室内に伝わるのを防ぐ遮熱効果があります。
また、冬場には室内の熱を保ちやすく、年間通して冷暖房費用の削減にも繋がります

さらに気泡は、湿度調整にも役立ちます。
湿度が高いときは空気中の水分を吸収し、湿度が低いときには水分を放出する機能が働きます。
適切に塗装することで、住宅内の湿度を調整し、湿気によるカビや室内の乾燥を緩和することができるでしょう。

丈夫な構造

ALCパネルは、中に細い鉄の網を埋め込んで強度を持たせています。
そのため、サイディングやモルタルの外壁よりも強い構造が実現できるのです。

また、アスベストや化学物質など、人体に有害な素材を使っていません。
シックハウス症候群など、人体への影響を心配する必要もないのです。

ALC建材は、正しくメンテナンスをすれば、長期にわたり住宅を守る耐久性のある外壁です。

ALC外壁の弱点

写真:ひび割れた外壁

ALCの外壁は、耐火性に優れた重厚感のある建材ですが、水に弱いという性質があります。
このような弱点を理解しておけば、必要なメンテナンスや注意点が見えてくるでしょう。

目地のシーリングに注意

一般的なサイディングの横幅は910〜1000mmですが、ALCの規格は設計に自由度を持たせたるため、小さめサイズの305mmか610mmです。
一般的なサイディングボードに比べて一枚あたりの横幅が狭く、同じ面積に張る場合、継ぎ目部分が多くなります。

外壁ボードの継ぎ目は、コーキングと呼ばれる目地剤でシーリングします。
この部分は、外壁材がいくら丈夫でも、劣化による影響を受けやすい素材です。

ALCは壁面の継ぎ目が多い分、シーリングの劣化による雨水の侵入リスクが、サイディングよりも高いと言えます
目地の補修を怠ると、外壁の内部に水が入って内壁が腐朽してしまうのです。
外壁塗装をじっしするなら、コーキングのメンテナンスも必ず行うようにしましょう。

クラックが入りやすい

ALCパネルは丈夫な反面、地震などの揺れを緩衝できず、目地部分に大きな負荷がかかりひび割れを生じることがあります。
もし、幅が0.3mm以上のひび割れが入れば、雨水の侵入を許し、内壁の劣化による外壁のはく離や欠損、雨漏りの原因になってしまいます。

また、ひび割れ部分から入った雨水により、塗装塗膜の密着性が悪くなって塗装が剥がれやすくなります。
塗装が剥がれかけてきている場合は、浮いてきている塗膜を綺麗に取り除いてから、新しく塗装する作業が必要です。

一点型の衝撃に弱く、はく離しやすい

ALC建材は、地震などの全体的な揺れに対しては強い素材です。
しかし、一点型の衝撃には弱く、物がぶつかるなどすれば以外と簡単に破損します。

建築の際には、パネルに穴を開けてボルトで止め、隙間を補修剤で埋めますが、補修剤が劣化して雨水が入るとボルトが錆びてきます。
ボルトが錆びて膨張すると、孫部分が内側から持ち上げられ「爆裂」と呼ばれる外壁のはく離現象が起きます。

ALC建材自体は丈夫な外壁材ですが、このような鉄部のサビによる劣化や破損が、壁の欠損や崩落事故につながります

ALC外壁の補修作業

外壁にALCを使用している住宅の場合、地震の発生時にクラックや外壁の欠損が起きる可能性が高くなります。

ALCは水に弱い性質があるため、ひび割れや欠損を放置してしまうと、住宅本体の劣化にもつながってしまうでしょう。
そこで、ALCを使用した外壁の、具体的な補修内容を理解しておきましょう。

クラックの補修

ALCパネルの場合、基本的に外壁の内側に防水シートを貼らないことが多いです。
一方、サイディングの場合はボードの下に透湿防水シートを張り、多少のヒビ割れやつなぎ目からの雨水の浸入
なら防ぐことができます。
透湿防水シートとは、水は通さず湿気などの水蒸気は通すシートです。

ALCは防水シートがないため、ひび割れがおきた場合は内部に水が一気に入ります
そのため、サイディングよりも迅速にクラックの補修をし、雨水の侵入を防ぐことが必要です。

クラックの正しい補修方法

ひび割れやコーキングの補修作業は、外壁の寿命を左右します。
そのため、丁寧な補修作業ができる塗装業者に依頼しましょう。

クラックの補修では、溝や割れ目部分に下地材のプライマーを塗り、その上にシーリング材を注入して表面を丁寧にならして仕上げます。
目地にあるシーリングが古くなっている場合は、シーリングの補填では効果が薄いので、打ち替えをするようにしてください

戸建て住宅の場合、コーキングの「打ち増し」は15万円ほどですが、「打ち替え」作業では20万円ほどかかります。
シーリングの打ち替えの方が高額ですが、外壁を長持ちさせるためには必要な費用です

ALCに向いた塗料

ALCは蓄熱性が高いため、透湿性の悪い弾性の高い塗料で塗装すると塗料が剥がれることがあります。
塗料の内側に残ったわずかな水分が水蒸気となり、日当たりの良い壁面で膨張して表面にプツプツとした膨らみができていくのです。
膨らんだ部分の塗膜は、密着性が悪く劣化して剥がれていきます。

塗膜が剥離したところから雨水が侵入してくるので、メンテナンス面で大きな問題となります。
ALCは水に弱いため、塗膜の劣化は命取りなのです。

ALC専用の塗料というものはありませんが、透湿性の悪い高弾性塗料は避けた方がいいでしょう。
一方、透湿性の問題もなく劣化にも強い、シリコン塗料以上のグレードがオススメです

塗装の劣化症状と塗り替えのタイミング

塗装のタイミングですが、表面を触って白い粉がついてきたら、外壁材を保護している塗膜が劣化しているサインです。
この症状はチョーキング現象(白亜化)と呼ばれ、塗料の主成分である樹脂が劣化し、色の成分である顔料が表面に浮き出てしまっています。

また、ツヤがなくなり変色や退色が見られる場合も、塗装表面が劣化してきている症状です。
放置しておくと塗装で水がはじけなくなり、ALCを雨水から守れなくなるため、適切な外壁塗装を実施してください

磁器タイル張りのALC外壁の補修

ALCパネルの中には、表面に磁器タイルを張り付けたものもあります。
このようなタイプでは、タイルとの接続面が浮いてくることがあります。

特に大きな地震の直後には、亀裂が入っていなくても専門家に壁の状態を診断してもらい、タイルの張り替えが必要ないかチェックしましょう。
接続面との接着に不具合があると、磁器タイルがいつ剥がれ落ちるかわかりません
人に当たると非常に危険なため、早急に浮いたタイル部分を張り替えるようにしてください。

ALC外壁の塗装もニシムラ塗装にお任せください

ALCには水に弱い性質があるため、塗装の劣化は命取りとなります。
住宅を長持ちさせるためにも、塗装の劣化には敏感になり適切な対処が必要となるでしょう。
また、シーリングの劣化にも合わせて敏感にならなければなりません。

もし、ALC外壁で塗装の劣化が気になるようでしたら、私たちニシムラ塗装にご連絡ください。
苫小牧市を中心に実績豊富な私達なら、迅速に調査に伺う事ができます。
もちろん、現地調査やお見積もりは無料で承りますので、安心してご相談くださいね。